スポーツ産業×産学連携の今を聞く~SPOJAM TAMA 事後レポート~

スポーツ産業×産学連携の今を聞く~SPOJAM TAMA 事後レポート~

ソーケンメディカルとリサコに聞く、スポーツ×医療・ヘルスケア産学連携のリアル

スポーツ産業×産学連携の今を聞く -SPOJAM TAMA とは

2025年東京デフリンピックの開催を契機とした、スポーツ産業の振興を目的とした展示体験イベント「SPOJAM TAMA(スポジャムたま)」が、2025年11月7日(金)・8日(土)に東京たま未来メッセ(八王子市)で開催されました。「SPOJAM(スポジャム)」には、“SPORTSをJAM=混ぜ合わせる”という意味が込められており、競技力向上や健康増進、障がい者スポーツなど、多様なスポーツの在り方を「する・みる・支える」の視点から考える機会となっていました。

SPOJAM TAMA開催について ~デフリンピック・QOL・スポーツ産業振興~

なぜ、多摩地域で初となるスポーツ産業展示会を開催したのかを運営事務局の方にお伺いしました。
担当者「コロナ後、スポーツイベントの通常開催やパーソナルエクササイズの普及により、スポーツをする・みる機会が定着しつつあります。スポーツ産業の今後 3~5 年の予測成長率は今後 3~5 年の予測成長率は 7.3%(2023 年, PwC 第 8 版)と上昇傾向で、スポーツ事業に関心を寄せる企業やユーザーも増加しています。こうした背景の中、本イベントでは、既存・新規の健康関連製品やサービスを展開する企業を知る機会を提供し、個人には運動理解促進や QOL(Quality of Life:生活の質)向上を、企業には健康経営や新規事業のヒント獲得を目的とした交流の場を設けました。また、開催 1週間後に開催された東京デフリンピックに関連した展示・セミナー・エキシビションマッチを通じ、大会への関心や商材活用の気運醸成も図りました。」

出展者と来場者の特徴

当日はどのような方が出展・来場されましたか?
担当者「出展企業は競技力向上、健康促進、障がい者スポーツ (福祉機器)、健康経営といったジャンルにおいてスタートアップ企業から上場企業まで40社が参加しました。7日(金)は、企業の健康経営担当者やスポーツ系新規事業担当者、健康コンテンツを求める自治体関係者が中心で、8日(土)はスポーツに興味関心のある子どもと親、アスリート、学生など幅広い一般参加者が訪れ、交流を通じた産業活性化が図られました。会期中には6本のセミナーが開催され、鹿屋体育大学の大塚直輝特任准教授による『産学連携のススメ』では、大学共同研究の実例や補助金活用方法が紹介されました。また、Panasonic社フェムテック製品とフットサル女子日本代表選手による対談、東京ヴェルディとパラリンピアンによる障がいとスポーツについてディスカッション、デフバスケットボール日本代表スペシャルチームと多摩地域ゆかりの大学チーム、地元の3×3プロチームが参加する特別試合などが行われました。」

多様な出展企業のうち、産学連携から新たな展開を目指している2社からお話を聞きました。

 

ソーケンメディカルが描く「スポーツ×医療・予防」の産学連携



ソーケンメディカルはどのような事業で、QOLへのアプローチ(スポーツ・コンディショニング領域の位置づけ)を行っていますか?

担当者「株式会社ソーケンメディカルは、磁気治療機器の開発・販売を通じて、人々の健康とQOLの向上を支えてきた医療機器メーカーです。長年培ってきた医療・ヘルスケア分野の知見を基盤に、現在はスポーツ領域における新たな価値創出にも取り組んでいます。同社が今注力しているのは、サッカーにおける『認知トレーニングシステム』の開発です。世界トップレベルのアスリートが必要とする“瞬時の判断力”や“認知能力”の向上を支援することを目的とし、現在は実用化に向けたラストステージに入っています。このシステムは、単に競技力を高めるだけでなく、『脳と体の連携』を全世代の共通コンセプトとしています。将来的には、幼児教育における脳育プログラムや、介護現場での認知機能維持・介護予防など健康寿命延伸への応用も視野に入れており、スポーツを起点に医療・予防分野へと広がる新たなヘルスケアの形を目指しています。」

大学・研究機関との共創は、どのように開発中のプロダクトや社会実装につながっていますか?

担当者「ソーケンメディカルでは、大学や研究機関との共同研究を積極的に行っていますが、その一つが埼玉大学先端産業国際ラボラトリーとの連携プロジェクトです。本プロジェクトでは、アスリートが世界で戦うために必要な『判断スピード』や『認知能力』を科学的に検証し、得られたエビデンスを現在開発中のアプリへと反映しています。現場で求められるのは、瞬時の状況把握やプレー選択といった“目に見えにくい能力”の強化です。こうした課題を大学との共同研究によって可視化・数値化することで、トレーニング内容やアルゴリズムの精度向上につなげています。また、競技スポーツに留まらず、幼児教育における能力開発や、介護分野での認知機能維持・介護予防への応用も期待されています。このように、研究成果を開発中のプロダクトへ直接反映する仕組みは、信頼性の高いアプリやサービスを構築する基盤となっています。産学連携による裏付けが、開発途上のシステムを確かなソリューションへと進化させています。スポーツ現場のニーズを出発点に、研究によるエビデンスをプロダクトへ落とし込み、社会実装まで一貫して進めている点が、同社の共創の大きな特徴です。」

今後、どのような挑戦と展開を目指していますか?

担当者「今後は、まず認知トレーニングアプリを完成させ、世界に通用するサッカー選手を育成するプラットフォームとして確立することを目標としています。並行して、その技術を教育・医療・介護の現場へと展開し、社会全体の健康課題を解決する事業へと発展させていきます。多摩から全国へ、そして世界へ。スポーツを起点とした認知トレーニングを通じて、あらゆる世代の可能性を広げる未来の実現に挑戦し続けます。」

 

リサコが見ている「現場課題×ヘルスケア」の共創のかたち



リサコはどのような事業を通じて、現場で見過ごされがちな課題にアプローチしていますか?

担当者「リサーチコーディネート株式会社(以下、リサコ)は、2017年に創業。大学等の研究支援事業として、動物の行動解析からスタートしました。現在は、AI開発、データ分析、システム・アプリ開発などを中心に、幅広い分野の受託開発を行っています。スポーツ・ヘルスケア・医療分野では、これまで経験や感覚に頼って評価されてきた『動作分析』『音声分析』『表情分析』などの生体情報を、解析技術で客観的に“見える化・数値化”する取り組みに注力しています。代表の橋本氏は、獣医師であり博士(工学)。脳や行動のメカニズムを専門に研究してきた背景から、人や動物の行動・動作を可視化する分野に創業当初から取り組んできました。行動や動作の“見える化”によって新たな発見を生み出し、それを社会実装につなげる。リサコは、現場の課題に寄り添いながら、実社会で活用できるプロダクトやサービスの開発を大切にしています。」

大学・研究機関との共創を通じて、課題の見える化やプロダクトへの反映はどのように進みましたか?

担当者「早稲田大学レスリング部との共同研究では、アスリートの動作やパフォーマンスの分析に取り組みました。身体的なデータの数値化に加えて、心理的指標の分析も行い、『強いアスリートの特徴』を多角的に研究したプロジェクトでした。当時はオリンピックメダリストも在籍しており、一流アスリートのデータを扱う貴重な機会となりました。
リサコは、現場にある“当事者にしかわからない課題”を丁寧にヒアリングし、技術でどこまで解決できるのかを共同で検討することが、最終的なプロダクトやサービスの質を高めると考えています。例えば医療分野では歩行分析が重要な評価指標となることがありますが、現場のニーズを踏まえ、使い勝手や技術面、費用面を総合的に検討し、3D歩行分析アプリの開発にも取り組んだこともあります。本経験から、大学や研究機関との共創は、単なる研究に留まらず、実用的なサービスへと発展している点が特徴と捉えています。」

スポーツを起点に、どのように共創の可能性を広げていきたいですか?

担当者「スポーツは私たちの生活に身近な分野であり、老若男女問わず誰もが参加できる仕組みを生み出せる、魅力的な領域だと考えています。また今後は、スポーツ分野以外にも、社会課題の解決に資するテーマに取り組みながら、産学官民の共創による新たなプロダクトやサービスの創出を目指していきます。SPOJAM TAMAやTama Cross Hubのような産学連携のハブに対しては、産学が一体となって研究開発を進められる実証フィールド(ラボ)の整備や、資金支援の仕組みづくりへの期待も寄せています。」

2社の取り組みから見える、スポーツ産業×産学連携のこれから

共通するキーワード ~QOL、エビデンス、現場課題~

両事例から見えてくる共通の軸は、「現場課題の可視化」と「科学的エビデンスの活用」です。両社はアスリートの動作や認知能力、健康維持など、現場で求められる能力をデータ化・分析し、大学や研究機関との共同研究を通じて課題を言語化・数値化しています。こうして得られた知見は、トレーニングプログラムやアプリ開発などのプロダクトに反映され、信頼性の高いソリューションとして社会実装に向けて動き出しています。また、両社とも競技現場に加えて、幼児教育や介護予防など日常生活や地域全体のQOL向上にもつながる価値創造を目指しています。

展示会が担う「出会いの場」としての役割

SPOJAM TAMAは、企業や大学、医療機関、市民が一堂に会し、偶然の出会いや直接の対話を通じて新たな発想や協業の可能性が生まれる場となりました。出展者からは「製品へのリアクションを直接得られる」「他社との情報交換や協業相談につながった」との声があり、来場者アンケートでも「同業者との交流」「一般消費者との接点拡大」への期待がうかがえました。また、2社のインタビューからも、「現場の生の声を聞き本質的な課題を可視化することの大切さ」を明らかにすることができました。こうした交流は、アスリート支援にとどまらず、日常の健康やQOL向上につながるプロジェクトの芽にもなります。両社の取り組みからも明らかなように、大学や医療機関との連携で研究成果を現場に落とし込み、社会実装へつなげる動きがすでに始まっています。こうした出会いの場に足を運ぶことで、自組織での連携の可能性を具体的に思い描きやすくなり、必要に応じて産学連携窓口やイベント事務局への相談・連絡につなげるきっかけにもなるでしょう。

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